公認心理師になるルートは?大学院に行く?行かない?
「公認心理師になるには、大学院に行かないといけないんですか?」
これもよく受ける質問です。答えは「行かなくても道はある。ただし、かなり狭い」です。
公認心理師の受験資格には、区分A・B・C……とアルファベットのついたルートがいくつもあります。受験案内の図を見て混乱した人も多いと思います。この記事では、それぞれのルートが誰のためのものかを整理し、これから目指す人にとって現実的な道を具体的に説明します。
先に結論
- 受験区分は全部で8つありますが、これから目指す人が使うのは、ほぼ区分A(大学+大学院)と区分B(大学+認定施設での実務)の2つです。
- どちらのルートでも、大学で決められた25科目を履修して卒業することがスタートになります。
- 区分Bは大学院に行かない道ですが、受け入れ施設が少なく、受験者の大半は区分Aです。
受験区分は8つ。でも、これから使うのは実質2つ
受験区分をまとめると、次のようになります。
| 区分 | 誰のためのルートか | 第9回試験の受験者数 |
|---|---|---|
| A | 大学で25科目、大学院で10科目を修めた人 | 1,937人 |
| B | 大学で25科目を修め、認定施設で実務経験を積んだ人 | 29人 |
| C | 外国の大学・大学院で学んだ人などで、国の認定を受けた人 | 17人 |
| D1 | 2017年9月15日より前に、大学院で必要な科目を修めて修了した人 | 155人 |
| D2 | 2017年9月15日より前に大学院に入学し、その後に必要な科目を修めて修了した人 | 41人 |
| E | 2017年9月15日より前に大学に入学して必要な科目を修め、大学院で必要な科目を修めた人 | 214人 |
| F | 2017年9月15日より前に大学に入学して必要な科目を修め、認定施設で実務経験を積んだ人 | 7人 |
| G | 心理職として5年以上働き、講習会を修了した人(現任者) | 終了 |
※第9回試験は2026年3月1日実施。受験者数は公認心理師試験研修センターの発表によります。
2017年9月15日は、公認心理師法が施行された日です。D1からFまでは、制度ができる前から学び始めていた人のための経過措置です。Gは現場で働いていた人のための特例で、2022年の第5回試験で終わりました。
これから大学に入る人や、今大学で学んでいる人が選ぶのは、AかBのどちらかです。第9回試験では、受験者2,400人のうち約8割が区分Aでした。

図:公認心理師の受験資格 ― あなたはどのルート?
どちらのルートも「大学の25科目」から始まる
AでもBでも、まず4年制大学で、法律で決められた25科目を履修して卒業することが必要です。
| 分類 | 科目 |
|---|---|
| 公認心理師の基礎 | 公認心理師の職責 |
| 心理学の基礎 | 心理学概論/臨床心理学概論/心理学研究法/心理学統計法/心理学実験 |
| 心理学の各領域 | 知覚・認知心理学/学習・言語心理学/感情・人格心理学/神経・生理心理学/社会・集団・家族心理学/発達心理学/障害者・障害児心理学 |
| 支援の基礎 | 心理的アセスメント/心理学的支援法 |
| 5分野の心理学 | 健康・医療心理学/福祉心理学/教育・学校心理学/司法・犯罪心理学/産業・組織心理学 |
| 関連する知識 | 人体の構造と機能及び疾病/精神疾患とその治療/関係行政論 |
| 演習・実習 | 心理演習/心理実習(80時間以上) |
※科目名は公認心理師法施行規則によります。分類は、わかりやすくするためにこの記事で分けたものです。
「心理実習」は、病院や学校などの現場に出て、見学を中心に学ぶ実習です。当分の間、医療機関での実習が必須とされています。
ここでつまずく人が多い
心理学部に入れば、自動的に取れるわけではありません。 25科目をすべて履修する必要があります。大学によっては、実習を受けられる人数に上限を設け、選考をしているところもあります。受験生のうちに、志望大学が「公認心理師の科目にすべて対応しているか」「希望者は全員履修できるか」を確認しておくと安心です。
卒業してから、足りない科目だけを取ることはできません。 法律の要件は「大学で必要な科目を修めて卒業すること」です。卒業後に科目等履修生として不足分を取っても、要件を満たしたことにはなりません(放送大学の案内などでも明記されています)。足りない場合は、大学に入り直して、必要な科目を修めて卒業する必要があります。
区分A:大学のあと、大学院へ進む
大学で25科目を修めたあと、公認心理師のカリキュラムに対応した大学院(修士課程)で、次の10科目を修めます。
| 分類 | 科目 |
|---|---|
| 5分野の理論と支援 | 保健医療分野/福祉分野/教育分野/司法・犯罪分野/産業・労働分野 に関する理論と支援の展開 |
| 実践の理論 | 心理的アセスメントに関する理論と実践/心理支援に関する理論と実践/家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践/心の健康教育に関する理論と実践 |
| 実習 | 心理実践実習(450時間以上) |
大学院の実習は、学部とは別物
大学院の「心理実践実習」は450時間以上。学部の80時間の5倍以上です。国の通知では、次のように決められています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 合計時間 | 450時間以上 |
| うち、担当ケースに関する実習 | 270時間以上 |
| さらにそのうち、学外施設での実習 | 90時間以上 |
| 実習先 | 医療機関は必須。主要5分野のうち3分野以上で行うのが望ましい |
「担当ケース」とは、実際に支援を必要とする人を担当し、指導を受けながら支援にかかわることです。見学中心の学部の実習とは違い、ここで初めて「支援する側」に立ちます。
2年間の修士課程で、授業・実習・修士論文を同時に進めるので、かなり忙しくなります。実習の具体的な中身は、別の記事でくわしく書く予定です。
区分Aのいいところ
- 臨床心理士もねらえる。 大学院が臨床心理士の指定大学院でもあれば、修了後に臨床心理士の試験も受けられます。
- 学びの環境が整っている。 教員や同級生と一緒に、授業・実習・研究を体系的に進められます。
- 受験者が多く、情報が集まりやすい。 試験対策や就職の情報も手に入りやすいルートです。
一方で、大学院入試があること、2年分の学費がかかることは覚悟しておく必要があります。
区分B:大学のあと、認定施設で働きながら学ぶ
大学で25科目を修めて卒業したあと、国(文部科学大臣と厚生労働大臣)が認めた施設で実務経験を積むルートです。「プログラム施設」と呼ばれることもあります。
「2年以上」だけど、標準は3年
法律上の期間は「2年以上」です。ただ、施設の認定について定めた国の通知では、プログラムは標準的には3年間で終えることが想定されています。中身の要件がかなりしっかりしているためです。
| 項目 | 内容(国の通知による) |
|---|---|
| 期間 | 法律上は2年以上。標準的には3年間 |
| 心理支援の実施 | 720時間以上かつ240回以上(前後に指導を受ける時間を含む) |
| ケース担当 | 3例以上。あわせて多職種と連携した業務を経験する |
| 指導者 | 公認心理師として5年以上の業務経験があり、所定の講習会を修了した人 |
| 指導の体制 | 指導者1人につき、実務従事者は5人まで |
区分Bの現実
いちばんの課題は、受け入れ先が少ないことです。施設が国の認定を受け、指導者を置き、プログラムを組む必要があるため、手を挙げる施設が限られています。第9回試験でも、区分Bの受験者は29人でした。
給与や雇用形態(常勤か非常勤か)は施設によって違います。応募を考えるときは、厚生労働省が公開している認定施設の情報を確認し、各施設に直接問い合わせることになります。
もう一つ知っておきたいのは、区分Bでは臨床心理士の受験資格は得られないことです。臨床心理士は、指定大学院などの修了が前提だからです。
私の身近には区分Bで受験した人は一人もいません・・・
大学院に行く? 行かない? 比べてみる
| 区分A(大学院) | 区分B(認定施設) | |
|---|---|---|
| 大学卒業後の期間 | 2年(修士課程) | 法律上2年以上(標準3年) |
| 入口 | 大学院入試 | 施設の採用 |
| 学び方 | 授業・実習・修士論文 | 現場で働きながら指導を受ける |
| お金 | 学費がかかる | 施設の雇用条件による |
| 実習・実務 | 450時間以上の実習 | 720時間以上かつ240回以上の心理支援 |
| 臨床心理士 | 指定大学院なら受験できる | 受験できない |
| 枠の多さ | 対応する大学院は多い | 受け入れ施設は少ない |
こうして並べると、区分Bは「大学院に行かない楽な道」ではないことがわかります。現場で経験を積める代わりに、期間は長めで、入口も狭いルートです。
大学院に進める状況なら、区分Aを第一に考えるのが現実的です。区分Bは、「早く現場に出たい」「特定の施設で働きたい」という明確な理由があり、受け入れ先が見つかる人に向いています。
よくある質問
Q. 心理学以外の学部を卒業しました。社会人からでも公認心理師になれますか? なれます。ただし、大学の25科目を修めて卒業するところから始める必要があります。心理系の学部に入学(または編入学)し、25科目を履修して卒業したうえで、区分AかBに進みます。通信制では、放送大学の教養学部が学部段階の科目に対応しています(大学院段階には対応していません)。なお、編入学しても、以前の大学の単位が25科目に読み替えられるとは限りません。入学前に必ず各大学に確認してください。
Q. 外国の大学や大学院で心理学を学びました。 区分Cの対象になる可能性があります。区分Cは、文部科学大臣と厚生労働大臣が「区分A・Bと同等以上の知識と技能がある」と認める仕組みで、個別の審査があります。くわしくは厚生労働省の「公認心理師法第7条第3号に基づく受験資格認定」のページを確認してください。
Q. 2017年より前に大学に入学していました。 区分D1〜Fの経過措置に当てはまるかもしれません。在籍していた大学・大学院が「経過措置対応科目」を公表していることが多いので、出身校に問い合わせてみてください。
Q. 最短で何年かかりますか? 区分Aなら、大学4年と大学院2年で最短6年です。区分Bは、大学4年のあとに法律上2年以上なので、こちらも最短6年ですが、標準的なプログラムは3年です。
まとめ
- 受験区分は8つ。これから目指すなら、区分Aか区分Bの2択。
- どちらも、大学で25科目を履修して卒業するのがスタート。卒業後に足りない科目だけを取ることはできない。
- 区分A(大学院)は、450時間以上の実習を含む2年間。臨床心理士もねらえる。
- 区分B(認定施設)は、法律上2年以上、標準3年。受け入れ先が少なく、臨床心理士の受験資格は得られない。
- 大学院に進める状況なら、区分Aを第一に考えるのが現実的。
ルートが決まったら、次は大学院選びです。次の記事では、パンフレットだけではわからない大学院の見方を紹介します。
参考
- 公認心理師(厚生労働省)
- 公認心理師の受験資格取得ルート(厚生労働省)
- 公認心理師法施行規則
- 「公認心理師法第7条第1号及び第2号に規定する公認心理師となるために必要な科目の確認について」(厚生労働省)
- 公認心理師法第7条第2号に規定する施設の認定等について(厚生労働省・文部科学省通知)
- 公認心理師法第7条第3号に基づく受験資格認定(厚生労働省)
- 第9回公認心理師試験 合格発表(公認心理師試験研修センター)
- 公認心理師 よくあるご質問(放送大学)
- 経過措置ルート(放送大学)
(2026年9月時点の情報です)
