公認心理師と臨床心理士、結局なにが違うの? 両方取るべき?
「心理の仕事がしたいんですけど、公認心理師と臨床心理士、どっちを取ればいいですか?」
高校での進路ガイダンスなどで聞かれることも少なくありません。名前は似ていて、仕事の中身もかなり重なっています。ただ、成り立ちも、なるまでの道のりも、取ったあとの扱いも違います。
この記事では、その違いを順番に整理します。最後に「両方取るべきか」についての考えも書きました。
ちなみに、私自身は公認心理師ができる前に大学院を修了しているため、臨床心理士を先に取り、公認心理師の第一回目の試験にてDルートでとりました。
先に結論
- 公認心理師は法律にもとづく国家資格で、臨床心理士は民間の団体が認定する民間資格です。
- 公認心理師は学部から指定科目を学ぶ必要があります。臨床心理士は大学院からの準備で間に合います。
- 心理職として働くつもりで大学院に進むなら、両方の受験資格が得られる大学院を選び、両方取るのが現実的です。
ひと目でわかる比較表
| 公認心理師 | 臨床心理士 | |
|---|---|---|
| 資格の種類 | 国家資格 | 民間資格 |
| 根拠・認定 | 公認心理師法(2017年施行) | 公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会 |
| 試験の実施 | 一般財団法人 公認心理師試験研修センター | 日本臨床心理士資格認定協会 |
| 主な受験ルート | 学部と大学院で指定科目を履修(区分A)<br>学部で指定科目を履修し、認定施設で2年以上の実務(区分B) | 指定大学院(第1種・第2種)または専門職大学院を修了 |
| 学部の専攻 | 指定科目の履修が必要 | 問われない |
| 試験 | 年1回。マークシート式154問 | 年1回。一次は多肢選択100題と論文、二次は面接 |
| 直近の合格率 | 60.0%(第9回・2026年3月) | 66.7%(令和7年度) |
| 人数 | 登録者 76,547人(2026年6月末) | 累計合格者 44,289人(令和7年度まで) |
| 資格の更新 | なし | 5年ごと |
| 法律上の義務・罰則 | あり | なし(協会の倫理綱領などで定める) |
※臨床心理士の人数は、これまでの合格者の累計です(医師免許取得者703人を含む)。いま資格を持っている人の数とは一致しません。
いちばん大きな違いは「国家資格かどうか」
公認心理師:法律で決められた資格
公認心理師は、2015年に成立し、2017年9月に施行された「公認心理師法」にもとづく資格です。心理職の国家資格はこれが初めてで、第1回試験は2018年9月に行われました。所管は文部科学省と厚生労働省です。
法律で決まっている資格なので、守るべきことも条文に書かれています。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 第40条 | 公認心理師の信用を傷つける行為をしてはならない |
| 第41条 | 業務で知った秘密を漏らしてはならない(公認心理師でなくなったあとも同じ) |
| 第42条 | 関係者と連携すること。心理的な支援を受ける人に主治の医師がいる場合は、その指示を受けること |
| 第43条 | 知識と技能の向上に努めること |
| 第44条 | 公認心理師でない人は「公認心理師」や、「心理師」という文字を使った名称を名乗ってはならない |
秘密保持義務(第41条)に違反すると、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金という罰則があります(第46条)。ここは試験でもよく出るポイントです。
臨床心理士:協会が認定してきた資格
臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会が1988年から認定している資格です。国家資格ができるまでの約30年間、病院や学校、相談機関で働く心理職の多くがこの資格を持ち、専門性の目安になってきました。
国家資格ではありませんが、今も現場で重視されています。たとえば文部科学省のスクールカウンセラー事業の実施要領では、スクールカウンセラーとして選ぶ人の一つめに公認心理師、二つめに臨床心理士が挙げられています。
どちらも「名乗る」ための資格
ここで一つ、誤解されやすい点があります。医師のように「資格がないとその行為をしてはいけない」業務独占の資格は、心理職にはありません。公認心理師は、資格がないと名乗れない名称独占の資格です。
つまり、カウンセリングという行為は、法律上は資格がなくてもできてしまいます。だからこそ、「この人は決められた教育を受け、試験に合格している」という証明として、資格に意味があります。
なり方の違い:公認心理師は「学部から」、臨床心理士は「大学院から」

公認心理師のルート
これから目指す人の主なルートは2つです。
区分A(大学+大学院) 4年制大学で決められた25科目を履修して卒業し、大学院で決められた10科目を修めます。大学では80時間以上の「心理実習」、大学院では450時間以上の「心理実践実習」が必要です。
区分B(大学+実務経験) 大学で同じ25科目を履修して卒業したあと、国が認めた施設で2年以上働きます。大学院に行かない道ですが、受け入れ施設は多くありません。2026年3月の第9回試験では、受験者2,400人のうち区分Aが1,937人、区分Bは29人でした。
このほかに、外国で学んだ人などの区分Cや、制度ができた2017年より前に学び始めた人のための経過措置(区分D1・D2・E・F)があります。これから大学に入る人や在学中の人は、基本的にAかBのどちらかです。
臨床心理士のルート
臨床心理士は、協会が指定した大学院を修了するのが基本です。
| 大学院の種類 | 修了後、受験までに必要なこと |
|---|---|
| 第1種指定大学院 | すぐ受験できる |
| 第2種指定大学院 | 修了後に1年以上の心理臨床経験が必要 |
| 専門職大学院 | すぐ受験できる |
※修了した時期などによって必要な経験年数が変わることがあります。受験前に協会の最新の受験資格を確認してください。
この違いがいちばん効いてくるのは「学部が心理ではない人」
公認心理師は、大学の段階で指定科目を履修していることが前提です。心理学以外の学部を出た人や社会人が公認心理師を目指すには、学部の指定科目をあらためて履修する必要があり、時間がかかります。方法は大学ごとに違うので、個別に確認が必要です。
一方、臨床心理士は学部の専攻を問いません。他学部出身でも、指定大学院に入れば受験資格を得られます。
心理学部で学んでいる人なら、両方の受験資格が得られる大学院に進むのがいちばん無駄のない道です。多くの大学院が、公認心理師の科目と臨床心理士の指定の両方に対応しています。大学院を選ぶときは、パンフレットや募集要項で「公認心理師対応」と「臨床心理士第1種指定」の両方が書かれているかを確認してください。
試験の違い
| 公認心理師試験 | 臨床心理士資格審査 | |
|---|---|---|
| 実施時期 | 年1回(最近は3月上旬) | 年1回(一次は例年秋) |
| 形式 | マークシート式154問(午前77問・午後77問) | 一次:多肢選択100題(2時間30分)と論文(1,001〜1,200字、1時間30分)<br>二次:面接(面接委員2人) |
| 配点・合格基準 | 一般問題1問1点、事例問題1問3点の230点満点。総得点の60%程度以上(第9回は136点以上) | 一次の成績が一定以上の人が二次へ進む |
| 直近の結果 | 受験者2,400人、合格者1,441人、合格率60.0%(第9回) | 受験者1,809人、合格者1,206人、合格率66.7%(令和7年度) |
公認心理師試験は、医療・福祉・教育・司法・産業の5分野にわたる知識と、法律や制度まで幅広く問われます。事例問題は1問3点と配点が大きく、「この場面で公認心理師として最も適切な対応は何か」を考える力が求められます。
臨床心理士の試験には論文と面接があります。知識だけでなく、自分の考えを文章にまとめる力や、面接で臨床家としての姿勢を見られるのが特徴です。
次の公認心理師試験(第10回)
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 試験日 | 2027年3月7日(日) |
| 試験地 | 東京都、大阪府 |
| 受験申込 | 2026年12月1日(火)〜12月25日(金)消印有効 |
| 合格発表 | 2027年3月31日(水)14時予定 |
| 受験手数料 | 28,700円 |
最新の情報は、公認心理師試験研修センターのホームページで確認してください。
取ったあとの違い:更新があるかどうか
臨床心理士は、5年ごとの更新が必要です。5年のあいだに研修会や学会に参加してポイントを集め、15ポイント以上になると更新できます。
公認心理師には更新制度がありません。一度登録すれば、資格はそのまま続きます。ただし、法律で「知識と技能の向上に努めること」(第43条)が求められています。更新がないからといって学ばなくてよいわけではありません。
臨床心理士の更新はたしかに手間がかかります。ただ、研修に出続ける仕組みがあることが、臨床心理士という資格への信頼を支えてきたとも言えます。
仕事ではどう違う?
実際の仕事内容は、ほとんど重なります。法律に書かれた公認心理師の業務と、協会が挙げる臨床心理士の業務を並べると、よく似ていることがわかります。
| 公認心理師の業務(公認心理師法 第2条) | 臨床心理士の業務(協会が示すもの) |
|---|---|
| 心理的な支援を要する人の心理状態を観察し、その結果を分析する | 臨床心理査定 |
| 心理的な支援を要する人に相談・助言・指導などの援助を行う | 臨床心理面接 |
| その関係者に相談・助言・指導などの援助を行う | 臨床心理的地域援助 |
| 心の健康に関する知識を広めるための教育と情報提供を行う | 上記に関する調査・研究 |
違いが出てくるのは、制度の中での扱いです。
医療の分野では、診療報酬の算定要件に「公認心理師」と書かれている項目があります。たとえば2024年度の診療報酬改定では、心的外傷に起因する症状がある患者に対して、精神科医の指示を受けた公認心理師が支援を行った場合の「心理支援加算」が新しくつくられました。病院で心理職を雇うときに公認心理師が求められやすいのは、こうした理由があるからです。
一方で、教育や福祉、開業の現場などでは、求人に「公認心理師または臨床心理士」と書かれていることも多く、臨床心理士の資格も引き続き評価されています。
【執筆メモ:ここに先生の見てきた現場の実感(採用の場面で両資格がどう見られているか等)を一言入れると、記事の厚みが出ます】
結局、両方取るべき?
心理職として働くつもりなら、取れる環境にいるなら両方取っておくのがおすすめです。理由は3つあります。
1. 追加の負担がそれほど大きくない 両方に対応した大学院なら、同じ2年間の学びで両方の受験資格が得られます。追加でかかるのは、主に試験の準備と受験料、臨床心理士の更新の手間です。
2. 働ける場所が広がる 医療機関では公認心理師が求められることが増えています。一方で、臨床心理士を条件にしてきた職場や、臨床心理士の研修・ネットワークを大事にしている現場もあります。両方持っていれば、どちらの条件にも応募できます。
3. 試験の性格が違うので、準備が互いに役立つ 公認心理師試験で身につく法律・制度や5分野の知識は、臨床心理士の試験でも土台になります。臨床心理士の論文や面接の準備は、自分の臨床観を言葉にする練習になります。
状況別の考え方
| あなたの状況 | 考え方 |
|---|---|
| 心理学部で学んでいて、大学院に進む予定 | 両方に対応した大学院を選び、両方取る |
| 心理学部で学んでいて、大学院には進まない | 公認心理師の区分Bを検討。受け入れ施設が少ないので早めに情報を集める |
| 心理学以外の学部を出た・社会人 | 臨床心理士の指定大学院が現実的な入口。公認心理師も目指すなら、学部の科目をどう履修するかを個別に確認する |
| 病院で働きたい | 公認心理師はほぼ必須と考えて準備する |
| スクールカウンセラーになりたい | どちらの資格でも応募の対象になる。採用条件は自治体ごとに確認する |
まとめ
- 公認心理師は国家資格、臨床心理士は協会が認定する民間資格。
- 公認心理師は学部から、臨床心理士は大学院からの準備。
- 公認心理師は更新なし、臨床心理士は5年ごとに更新。
- 仕事内容はほぼ同じ。違いが出るのは制度の中での扱い。
- 大学院に進むなら、両方に対応した大学院で両方取るのが現実的。
資格は、心理職として働き始めるための条件です。どちらを取るかと同じくらい、大学院の2年間で何を学び、どんな実習を経験するかが大切です。
次の記事では、公認心理師になるルートをもう少し詳しく見ていきます。
参考
- 公認心理師(厚生労働省)
- 公認心理師試験(一般財団法人 公認心理師試験研修センター)
- 第10回公認心理師試験 概要・スケジュール(同)
- 第9回公認心理師試験 合格発表(同)
- 公認心理師 登録者数の状況(同)
- 公認心理師法
- 公認心理師法施行規則
- 公認心理師の受験資格取得ルート(厚生労働省)
- 公益財団法人 日本臨床心理士資格認定協会
- 「臨床心理士」資格取得者の推移(同)
- スクールカウンセラー等活用事業実施要領(文部科学省)
(2026年9月時点の情報です)
