公認心理師はこれからどうなる?|日本学術会議の報告をざっくり解説
2026年8月28日、日本学術会議から「公認心理師の国家的活用の在り方 〜職域の拡大と技量向上の責務〜」という報告が公表されました。

36ページあります。タイトルからして、なかなか手強そうです。
そこで今回は、生成AIにも報告書を読んでもらい、内容を整理してもらいました。そのうえで元の報告書を確認しながら、「つまり、何が言いたいの?」というところまで、できるだけざっくり噛み砕いて紹介します。いわば、AIと一緒に読む「ざっくり解説+ちょっと超解釈」です。
なお、今回の報告は、今後の制度変更が決まったという文書ではありません。日本学術会議の分科会(心理学・教育学委員会など5つの委員会の合同分科会)から、公認心理師制度の現状や課題、今後検討すべき方向性が示されたものです。
細かな制度や数字をすべて追うのではなく、公認心理師を目指している人や、すでに公認心理師として働いている人が、「これから何が変わっていきそうなのか」をつかめるようにまとめてみます。
そもそも、なぜ今こんな報告が出たの?
公認心理師法が公布されたのは2015年です。公認心理師は、日本で初めての心理学に関する国家資格として誕生しました。
2026年6月末時点で、登録者は76,547人。保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働という5つの分野を中心に活動しています。
人数だけを見れば、かなり大きな資格になりました。ただ、「国家資格として、社会の中で十分に活かされているのか?」となると、まだ課題が残っています。
公認心理師法の附則第5条には、法律の施行後5年を経過した時点で施行の状況を検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じることが定められています。実際に厚生労働省による検討は行われましたが、今回の報告では、そこで見つかった問題や課題が十分に解決されたとは言い難いこと、そして、資格に対する国民の認知度もまだ高いとは言えないことが指摘されています。
ざっくり言うと
国家資格はできた。人数も増えた。 では次に、この資格を社会の中でどう機能させていくのか。 そこを考える段階に入った、ということです。
まず、公認心理師はどこで働いている?
報告が参照しているのは、令和5年度(2023年度)の公認心理師活動状況等調査です。登録者全員を対象に行われ、38,827人が回答しています(回収率54.4%)。
主な勤務先(単一回答)は、次のとおりでした。
| 分野 | 割合 |
|---|---|
| 教育 | 27.1% |
| 福祉 | 24.7% |
| 保健医療 | 24.1% |
| その他の機関 | 8.3% |
| 産業・労働 | 5.6% |
| 司法・犯罪 | 3.9% |
意外に感じる人もいるかもしれませんが、最も多いのは教育分野です。ただし、福祉・保健医療との差はごくわずかで、報告でも「僅差ではあるが」と書かれています。
そのほか、全体的な特徴として次の点が挙げられています。
- 女性が全体の約7割を占める
- 非常勤が4割を占め、職業として不安定
- 常勤ポストは25.4%にとどまり、複数の勤務先を持つ人が多い
- 臨床心理士との資格の重複が38.9%と最も多い
つまり、資格を持っている人は増えたけれど、「国家資格を持つ専門職として安定して働ける場所」が同じ勢いで増えたわけではない。ここが一つの大きな問題です。
5つの分野、それぞれ何が課題?
報告では、保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働について、それぞれ現状と課題が整理されています。全部を細かく追うとなかなかの量なので、ここでは思い切って圧縮してみます。
保健医療|心理支援が制度の中に入り始めた
医療分野では、かなり大きな動きがあります。
2026年度の診療報酬改定では、精神科専門療法の「認知療法・認知行動療法」の実施者に公認心理師が追加され、330点の評価が新設されました。また、2024年度に新設された「通院・在宅精神療法心理支援加算」が拡充され、神経症性障害、ストレス関連障害、身体表現性障害に対する心理支援も算定できるようになりました。
報告は、これらの変化を「さまざまな精神疾患に対する対面による心理支援を公認心理師が担うことを保険制度が認めたことを意味する」と評価しています。
超解釈すると
「公認心理師を雇うことに、医療機関側にも制度上の意味がある」という環境が整い始めた、ということです。
ただし、算定のハードルは低くありません。施設基準には認知行動療法の実施経験のある公認心理師が常勤で勤務していることなどが含まれ、算定には所定の研修の受講も必要です。
もうひとつ、これから医療分野で働く人に関わる話があります。2019年から当分の間の措置として認められてきた、いわゆる「みなし公認心理師」(従前から医療機関で働いていた臨床心理技術者など)の扱いが、2028年5月31日をもって廃止されることが明示されています。医療現場では、資格の有無がよりはっきりと問われるようになっていきます。
なお報告は、公認心理師が診療の補助にあたる行為を行えない資格であること(診断や治療には従事しない)にも触れています。医療の中で働きながらも、心理学に基づいて生活への適応や生活の質の向上を支援する。その専門性をより明確にしていくことが求められています。
福祉|「困りごとを減らす」だけではない
福祉分野では、現在、児童福祉を中心に多くの公認心理師が働いています。発達障害や知的障害、不登校、虐待などへの支援のほか、心理面接、心理検査、多職種へのコンサルテーション、学校や園での観察など、その仕事は幅広くなっています。
そのうえで報告が重視しているのが、意思決定支援です。
本人に意思があっても、それをうまく形にしたり、表現したり、周囲に尊重してもらったりすることが難しい場合があります。そこで、本人の意思形成の過程に寄り添い、意思表出を支え、意思決定が適切に尊重されるよう専門的に関わることが、公認心理師の役割として期待されています。報告では、福祉分野の公認心理師を「人権擁護を対人支援の水準で具体化する専門的中核を担う存在」とまで位置づけています。
また、福祉では「マイナスを減らす」という視点だけではなく、困難を抱えながらも、その人がどう生きがいを持って生活していけるかという「プラスを増やす」視点も重要だとされています。
超解釈すると
「この人には何ができないのか」を見るだけではなく、「この人がその人らしく生活するために、何が必要なのか」を考える。そんな心理職の役割が示されています。
いま起きている課題にも触れられています。2024年度の障害福祉サービス等報酬改定で、支援時間に応じて報酬を算定する仕組みに変わった結果、短時間の個別支援では報酬を得にくくなり、公認心理師が専門性を発揮して個別療育を行う機会が減っている、という指摘です。高齢者福祉への期待が高まっていることも、あわせて示されています。
教育|スクールカウンセラーを「学校の外の人」のままにしていいの?
教育分野では、不登校、発達障害、友人関係、いじめ、自傷、虐待、インターネット問題、ヤングケアラーなど、扱うテーマが非常に広くなっています。
求められるのもカウンセリングだけではありません。実際、支援の方法として最も多いのは教職員へのコンサルテーション(80.0%)で、個人への心理面接や、学級・学校での関与・観察(ともに73.0%)が続いています。
報告では、スクールカウンセラー等への研修が各地方公共団体に委ねられている現状を踏まえ、研修内容の体系化・標準化の必要性に加えて、常勤化の必要性にも触れています。常勤化によって、災害支援や緊急支援時の迅速な対応も可能になると述べられています。
さらに踏み込んだ提案もあります。スクールカウンセラーの採用では複数の資格が指定されていますが、公認心理師の共管省である文部科学省は、公認心理師を優先して採用する仕組みを導入・整備する必要がある、というものです。
教育分野の難しさは、「何をもって支援がうまくいったとするのか」を単純には決められないところにもあります。たとえば、不登校の人数が減れば必ず支援が成功したと言えるわけではありません。いじめの認知件数も、減った方がよいとは限らず、適切に把握できるようになった結果として増えることもあります。
超解釈すると
週に何時間か学校へ来て、相談室で相談を受けるだけでは、今の学校の問題には対応しきれない。子ども一人への支援だけではなく、「学校という環境そのもの」に働きかける心理職が求められている、ということです。
司法・犯罪|国家資格なのに、資格が人事にあまり使われていない
司法・犯罪分野には、少年鑑別所、少年院、刑事施設、家庭裁判所、警察、保護観察所、犯罪被害者支援などがあります。ここでは、再犯防止や被害者支援のために、アセスメントや心理的支援などが行われています。
この分野は、常勤がほとんどで、研修体制やスーパービジョンの仕組みも比較的整っています。ところが、公的機関の職員はそれぞれの公務員試験によって採用されるため、公認心理師資格を持っているかどうかが採用に直接関係していないのが現状です。
報告は、心理学の専門性を持つことの証として、職務内容によっては公認心理師資格を持つ人を優先して登用する人事の仕組みが必要だとしています。そして、「現状では公認心理師が最もその専門性を活用していない分野である」とまで書いています。
超解釈すると
心理の専門的な仕事をしているのに、心理の国家資格が人事上あまり活かされていない。少し不思議な状態です。公的機関だからこそ、国家資格をどう位置づけるのかを整理しよう、という話です。
なお、2025年の拘禁刑の施行や、2026年12月25日施行のこども性暴力防止法(いわゆる日本版DBS法)に触れ、被害者支援と加害者支援の双方で公認心理師の実働が期待されるとも述べられています。
産業・労働|まだ「心理職がいる会社」が普通ではない
産業・労働分野は、5分野の中でも従事する公認心理師が少ない領域です(5.6%。なお最も少ないのは司法・犯罪の3.9%)。
一方で、職場のメンタルヘルス、休職・復職支援、心理相談、ストレスチェックなど、関われる場面は少なくありません。2018年の労働安全衛生規則の改正で、公認心理師はストレスチェックの実施者として認められています。
さらに、2025年5月に公布された改正労働安全衛生法により、労働者数50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化されます(施行は公布後3年以内の政令で定める日)。心理的支援のニーズは、さらに高まることが予想されます。
報告では、働く人すべてを支援対象として、健康な人も含め、個人と組織の双方に対して1次〜3次予防のアプローチが求められるとされています。しかし現状では、自死や事故災害時の緊急支援、復職支援など「非常時や困った時の相談先」としての機能が中心になりやすく、ストレスチェックの集団分析を活用した支援など、産業保健の中核的な役割までは担えていない、と指摘されています。
超解釈すると
「困った人が出たら相談に乗る心理職」だけでなく、個人と組織の両方に働きかけ、予防や職場環境の改善にも関わる心理職へ。産業・労働分野には、まだ広がる余地がありそうです。
ここからが本題。「公認心理師をどう育てるのか」

図:報告が示す2つの柱と、5つの方向性
今回の報告には、大きく二つの柱があります。
一つは、公認心理師が活躍できる場を増やすこと。 もう一つは、公認心理師自身の能力を高めることです。
つまり、職域だけ広げればよいわけではない。その仕事を担えるだけの専門性も、きちんと保証していこうということです。
実習|大学によってバラバラでは困る
公認心理師養成では、実習が重視されています。ところが、全国共通の標準化された「実習(指導)ガイドライン」は、まだ策定されていません。報告は、これが「公認心理師の資質や技術向上を促す上で大きな支障になっており、早急に作成する必要がある」としています。
指導の目安としては、学部段階、大学院段階、就職後5年目という3つの段階を設定し、それぞれの段階で何を身につけるのかを明確にしていく方向が示されています。対象になるのは、専門技能だけではありません。公認心理師としての態度、組織性と学際性、教育・研究能力も含まれます。
実習を受け入れる側の課題も挙げられています。特に教育、司法・犯罪、産業・労働の現場では、誰が実習指導者を務めるのかについて十分な合意ができておらず、指導者を安定して配置する仕組みが必要だとされています。
超解釈すると
「実習を何時間やったか」だけではなく、「その結果、何ができるようになったのか」を見よう、という方向です。
養成カリキュラム|そもそも「全国共通の核」がない
現在も、公認心理師になるために必要な科目は定められています。2025年1月時点で、226の大学と191の大学院が公認心理師を養成しています。
ただし報告では、その基盤となるコアカリキュラムが存在せず、特に大学院のカリキュラムについては内容がほとんど示されていないことが課題として挙げられています。カリキュラム等検討会についても、開催するとされながら2026年5月時点で開かれていないことが指摘されています。
そのうえで、公認心理師の養成を標準6年間として捉え、大学では基礎教育を重視し、大学院では実務教育を重視するという考え方も示されています。
超解釈すると
公認心理師養成を「国家試験に受かるための教育」にしない。大学では心理学の基礎を学び、大学院ではより実践的な専門性を身につける。6年間を通して、何をどの段階で身につけるのかを整理していこう、ということです。
資格を取ったあと|「取ったら一生そのまま」でいいの?
公認心理師法第43条では、資格取得後も知識や技能の向上に努めることが求められています。ただ、これは努力義務にとどまっており、継続的な研修が資格を維持する条件になっているわけではありません。
今回の報告では、今後の方向性の一つとして、「公認心理師資格取得後の継続的研修義務等に関する制度化を検討する必要がある」とされています。研修の受講状況をポートフォリオ(デジタル庁が推進するオープンバッジなどを含む)として記録・開示する仕組みについても触れられています。
その理由として挙げられているのが、利用者の目線です。相談しようとしている公認心理師がどんな背景を持ち、どの分野を得意とし、知識や技能をアップデートできているのか。利用者にとっては大きな関心事である、というわけです。
超解釈すると
「国家試験に合格したときの知識」を一生保証する資格ではなく、専門性を更新し続ける資格へ、ということです。
ただし、今回の報告で資格更新制などの導入が決まったわけではありません。あくまで、今後検討すべき方向性として示されています。
「専門公認心理師」という仕組みも検討課題に
ここも重要です。
報告では、公認心理師を「心理学領域における汎用の基礎資格」と位置づけ、そのうえで主要5分野の実状に応じて、標準化された専門公認心理師制度などの在り方を検討する必要があるとしています。
イメージとしては、公認心理師という共通の基礎資格があり、その上に領域ごとの専門性がある、という形です。
実は、職能団体はすでに独自に上位資格の認定を始めています。ただ、それぞれの資格の関係性については議論がなされていない、というのが報告の指摘です。
超解釈すると
一つの資格で、医療も、学校も、司法も、産業も、福祉も、全部同じ専門性です。というのは、さすがに無理があります。そこで、「基礎資格としての公認心理師+領域ごとの専門性」という二段構えを、バラバラにではなく標準化された形で検討していこう、という発想です。
もちろん、現時点で新しい専門資格制度の創設が決まったわけではありません。
国家試験も変わるかもしれない
報告では、国家試験の在り方についても、かなり具体的な課題が挙げられています。
| 指摘されていること | 内容 |
|---|---|
| ブループリントのばらつき | コアカリキュラムが明確でないため、分野によって量や質にばらつきがある |
| 医学的知識の出題 | 公認心理師に必要とされる範囲を超えると思われる医学的知識を問う問題が少なからず見られる |
| 事例問題の妥当性 | 知識問題の3倍の配点であり影響が大きいため、現場で本当に必要な知識を測れているか、出題委員以外の外部機関が確認する仕組みが必要 |
| 検証の透明性 | 問題の妥当性はセンター内部で検証されているとされるが、その概要は公表されていない |
超解釈すると
国家試験で何を問うかを先に考えるのではなく、「公認心理師として何を身につける必要があるのか」をまず明確にし、その内容を国家試験に反映させよう、ということです。国家試験対策のための勉強と、公認心理師になるための教育を、同じ方向に向けようという話でもあります。
主治医の「指示」はどうなる?
今回の報告では、公認心理師法に定められている「主治医の指示」についても検討課題として挙げられています。
現在の運用基準そのものについては、実態に照らして概ね適正に用いられていると評価されています。一方で、保健医療分野以外での運用には引き続き留意が必要だとされています。
たとえば学校では、同じような状態の児童生徒であっても、主治医がいるかどうかによって対応が異なる例が生じています。そこで、各分野で不合理な運用が起きていないか、具体的な事例を丁寧に集めながら、必要に応じて運用基準を見直していくことが求められています。5分野に括れない私設心理相談機関などについても、調査や検討が必要だとされています。
超解釈すると
制度そのものをなくそうという話ではありません。仕組みは概ね適切に運用されているものの、学校など医療以外の現場では、今の運用で不自然なことが起きていないか確認していこう、ということです。
最後に。この報告が描いている「公認心理師のこれから」
報告の最後では、今後の方向性が5つにまとめられています。
| 今後の方向性 | |
|---|---|
| 1 | 国民に対する公認心理師の更なる周知と活動の場の拡大に努める |
| 2 | エビデンスに基づく活動について、心理学界のコンセンサスを形成する |
| 3 | 養成のコアカリキュラムを明確に設定し、国家試験の出題に適切に反映する |
| 4 | 公認心理師を汎用の基礎資格と位置づけ、標準化された専門公認心理師制度等の在り方を検討する |
| 5 | 資格取得後の継続的研修義務等に関する制度化を検討する |
今回の報告を通して見えてくるのは、公認心理師制度が、
「国家資格をつくる段階」から、「国家資格を育てる段階」へ
移ろうとしている姿です。
これまでの公認心理師をめぐる話題は、「どの科目を履修すればいいのか」「受験資格はどうなるのか」「国家試験では何が出るのか」といった、資格を取るまでの話が中心でした。
でも、今回の報告で問われているのは、その先です。
資格を取った人が、どこで働くのか。どんな専門性を持つのか。その専門性を、どう社会に示していくのか。そして、国民が安心して公認心理師を利用できる仕組みを、どうつくるのか。
公認心理師が誕生して約10年。資格ができたから完成、というわけではありません。むしろ、ここからが制度づくりの本番なのかもしれません。
公認心理師を目指している人にも、すでに現場で働いている人にも、今回の報告は「この先」を考えるうえで、かなり気になる内容です。
報告書を読んでみたい人へ
報告書の本文は、日本学術会議のサイトで公開されています。全36ページで、要旨は最初の3ページにまとまっています。
(2026年9月時点の情報です)
